日本の正しい風景から・・・「暮らしを紡ぐ」

松本の余韻をそのままに大阪南港から九州別府へ、フェリーで一晩ぐっすり眠って九州に上陸しました。
別府から真西の長崎へ、阿蘇の北側はなだらかな丘陵地と黄色く色づいた麦畑。大分自動車道を時速100km余りでぶっ飛ばしても延々と数時間、田園風景が続きます。麦の刈り取りが終わった順に、すぐさま水を張り田植えをします。この季節、農家はてんてこ舞いの大忙し。手入れの行き届いた田畑を見ながらそれを営む人の暮らしを肌で感じました。「私はこういう丁寧に日々を暮らしている人達の中に飛び込んで、何を語ろうと言うのかしら・・・」
ポンタは1987年からかれこれもう20年、このホッチキスパーティーを各地でやってきました。工房やお店、学校などそれぞれ10人から20数人の人たちの前でフリースの勉強会をします。
さて、いつものことですが、行く道々毎回落ち込みます。・・・参加費8500円というとても高い講習で、参加者にはそれに見合う何を得て帰ってもらえるんだろか・・・。
今回は、この美しい田畑を見て、またとびきり落ち込みました。

片山さんちの美しい果樹園

柿の木の下でランチ

リビングの窓辺には片山さんが草木で染めた糸
さて、着いた先は長崎諫早、片山詠子さんのきのね工房。長崎各地から10人余り、地元にしっかり根を下ろして手仕事で生業を営む若い作り手たち、このワークショップに駆けつけ参加した期待のまなざしに、熱い思いが伝わります。
それからなにより、片山さんちは農家、お父さんたちの手入れの行きとどいた梨、柿、枇杷の果樹園が母屋に続く山の斜面に美しく広がります。
さあ!この2つのプレッシャーに負けないだけのことができるのか?・・・
お昼ご飯は柿の木の下で、一品持ちより、地元で採れた貝ムツゴロウをほおばり、おにぎりに豚汁、手作りパンにもぎたての枇杷・・・おてんとさんの下で働く幸せを実感。参加者は主に30代40台の女性、皆この日のために前々から準備、いつもは家族の為ために使う、時間とお金と自分のからだを、今日は自分のために使います。

田篭さんの工房の2階は織機がずらり、機に向かうと窓から麦畑が見られます。

福田さんの着ているニットは、自分で紡いだカシミヤの糸。

今回はギャラリースペースでワークショップ、この後「羊カルタ」で盛り上がりました。

田篭さんのブラックウエリッシュのコート、なめるように薄くてしゃきっとした仕上がりはすばらしい!
ニ日目は福岡小郡の翔工房・田篭さん宅、古民家の白壁と太い梁、玄関にはダイナミックな花木の生け花の似合う美しいギャラリー兼織り工房。数年前自宅の離れを改造という。2階は機が10台余りがズラリと並び壮観。
当日は25人集り、その賑やかなこと!ノリもいいけど腕もいい、生徒さんの一人が何気なく着ていたカシミヤのニットはなんと手紡ぎ!デザインもイケテマス。
その田篭さんの作品はツイードの本格派、作品展に向けて作りためているという作品を少しだけ見せていただく。ブラックウェリッシュで作った一枚仕立てのコート、その服地の薄さとしゃきっとした仕上がりにうなる、聞けばスピンハウスからきたフリースとのこと、原毛屋冥利に尽きます。
その晩は田篭さんと、手紡ぎのこれからについて大いに盛り上がって飲み語る。
「今までの手作りだから何でもいい、という時代は終わった。これからは手作りにしかできないこと」を意識して精進したモノしか通用しなくなるのでは、という結論に達したのです。ポンタはここでも松本で感じたこと、そのままに田篭さんと共感するところでありました。

シュガーキューブのお店にて延吉さん

吉本さんの布フェルトのマフラーは首元に鮮やか、涼しげで今の季節にぴったり。

延吉さん作の若草色の布フェルトのドレスとボレロ、コサージュも素敵です。
最後に訪れたのは北九州のシュガーキューブ延吉さんのところ、彼女はアート系古本とフェルトなどの雑貨を扱うお店をしています。
この日の参加者は、日ごろ彼女のお店に集る若いアーティストやスピナー、障害者の施設で働いていて羊に興味を持ち始めているという人や、トルコのキリム織りの敷物などを輸入している若手など・・・多彩な顔ぶれ。若い世代の勢いを感じました。

日本の正しい風景

田植えが終わった水田にはおたまじゃくしがいっぱい!
今回こうして、松本−長崎−福岡−北九州と、田植え真っ最中の日本を縦断。
今さら「手紡ぎ」がなんじゃらほい・・・と思うほど、圧倒的な説得力を持つ美しい日本の田畑を走り抜け、改めて手作り−クラフトのこれからを考えました。
田篭さんの言われるとおり、もう手作りというだけで売れる時代は終わろうとしています。そして作り手も増え、これで食べていきたい人ももちろん増えています。それは松本のクラフトフェアーの950の応募から250組に絞られてようやく出店できたクラフトマン達のレベルの高さからも歴然とした事実です。
今回スピンハウスで作ったオリジナルの手ぬぐいを染工場で作ってもらってつくづく感じたことですが、大量生産にはどうしても最低ロットであったり、素材や工程、価格という制約があり、その中でどこまでいいものを作るかという限られた条件が付きまといます。1枚あたりは安く仕上げられても、何百枚と同じものができるのです。それに比べて手仕事は一つ一つ違うものも出来、ロットも自在にコントロールできる良さがあります。ただし、どこまで効率良く仕事ができるかということ。
改めてもう一度、大量生産にはできないこと、「手仕事にしかできないもの」とは、そしてその良さを最大限に引き出すということ。
これからのこと・・・そして「暮らしを紡ぐ」・・・
たくさんのこと考えながら帰ってきました。

Comments
またいつか、どこかでお会いしたいです。 ポンタ
畑や田んぼは、我が家の近くでも目にする光景です。「暮らしを紡ぐ」「手作りにしかできないこと」まことに感慨深いお言葉。勝手に励まされたような気になりました。ありがとうございました〜。
いつかスピンハウスにも訪ねられたらなぁと思ってます○
生きていく勇気、生まれ変わったように見事に変身するちから!いくつになっても壁はある、おたまじゃくしのように自分のしっぽをエネルギーにして変身すればいいんだとおもったのでした。はい